この頃はなぜか木曜日には店頭に並ぶようだ。という
わけで、今日は「ハリー・ポッター アズカバンの
囚人」の話題でうちの職場も盛り上がってたんだけど、
僕は一人ひそかに「マトリックス アルティメット・
コレクション」に
も悪くないんだけど(ってぇかむしろ好きだけど)、
真の漢はコチラだろう。ん?ん〜?
いや、実は大好きなのだ、マトリックス。だけど
結構、見る者を選ぶ映画でもあるような気がする。
まったく受けつけないという人もいるし、なんだか
必死に否定している意見もチラホラと見聞する。
僕としては、第一作のはじめの方でネオが謂う「目が
覚めてもまだ夢を見ているような感覚」にピンと来た
向きはスッと入っていけるのではないかと思う。僕自身が
そうだった。この一言で「この映画は何か違う」と感じて
のめり込んでいったのだ。今思えば懐かしい。
アクションシーンとか、日本のアニメの引用とかばかりが
話題になりがちなシリーズなのだけど、シリーズを通じての
「謎解き」「深読み」が最大のお楽しみだと思う。そういう
意味でも、このDVDボックスは注目である。何しろ、10枚組
のうち、本編ディスクは3枚、アニマトリックスという
マトリックスの世界観を背景にした短編オリジナルアニメ集が
1枚、実に残り6枚がすべて、メイキング集や資料集などに当て
られており、マニア的好奇心を満たすとともに飽くなき知的
探究心にも大いにえさを与えてくれそうなのだ。
実のところ、もう語りたくて語りたくてうずうずしている
のだけど、しつこいおやぢトークもちょっとアレなので、
少しだけにしておくのだが、一作目で問われる「Matrixとは
何か?」という問いは三部作すべてを通じる大きなテーマと
して機能していると見るべきだろう。この問いに対して、
「コンピューターが生み出す、現実と区別がつかない仮想
世界」と答えるのはあくまで映画の作劇上の設定を言っているに
過ぎない。matrixを英和辞典で引いてみよう。並べられている
訳語をいろいろ見ていると、この言葉が「事物を認知する枠組み」
みたいな意味合いを持っていることに気づくだろう。第一作の
中で語られるセリフ「心を解き放て」とはすなわち、matrixを
乗り越えろと言うに等しい。こうしてつらつら考えていくと、
この映画の物語世界が、脳が世界を再構築し認知していく構造を
模しているのがわかってくる。マトリックスシリーズが描くのは
絵空事だがファンタジーではない。閉じた円管や卵のような
世界を描いているのではない。それは一枚の鏡面だ。マトリックス
シリーズを、あなたのかわりに観てあげられる存在はどこにも
いない。この作品は普遍的なのではなく、誰にとっても個人的で
あるようなやり方で多くの人の支持を受けた。だからファンは
語りたがる。もし、あなたがマトリックスを見て、好き嫌いとは
別に、なにか心に引っかかりのようなものを感じたのなら、
このボックスでじっくり物語世界を探求してみるのもいいかも
しれない。…マニア専用価格だけど(苦笑)。